おがわ工建
稲垣建材
古川工務店
片山工務店
若手大工を育成するために工務店3社で企画された『大工育成ネットワーク京都』について本日はお話をお伺いできればと思います。
まずは設立のきっかけを教えていただけますでしょうか。
『大工育成ネットワーク京都』は、北海道で既に実践されている大工育成のプログラムからヒントを得て企画したものです。
私と古川さんが建設部会での研修旅行で北海道へ行き、大工育成に取り組まれている企業の見学をさせてもらいました。中心となって活動されている武部建設株式会社のほか、協力されている工務店もまわらせてもらい、色々な
ノウハウを教えていただいたんです。
そこで「京都でもやらないの?」という話になり、大工が減って来ているまさに今やらなくてはと心を動かされました。特に京都では、宮大工、町屋大工、数奇屋大工など多くの職人が古来より活躍してきた歴史があります。そんな京都で大工が減ってしまい、伝統的な技術や建物が廃れていっては話になりませんよね。自分たちが行動しなくてはいけないと、改めて強い危機感を覚えたんです。
私たちの取り組みは北海道で行われているものと規模も内容も異なりますが、大工が減少している現状をなんとかしたいという根幹の想いは同じです。
大工の高齢化に伴って若い大工が全国的に不足しているのは非常に大きな問題ですよね。
はい。弊社でも新人が定着しないということに以前から課題を感じていました。
新人の方が続かない理由は何なのでしょうか
若い新人と先輩職人との間で、ものの価値観や考え方が違っているということは理由として大きいと思います。1番若い先輩が40代なんてこともありますからね。年齢差があると話しづらいこともあるでしょうし。
若い人の育成はどうしても現場任せになっていたので、会社として新人を育てる余裕が持てていないという自覚はありました。そこに大きな課題を感じていましたが、自分の会社だけで何とかするには限界がある…。そこで、古川さんと小川さんに声を掛け、3社で『大工育成ネットワーク京都』を企画する運びとなりました。
このままいけば若い大工がいなくなってしまう、と。そんな状況を打開するためにみなさんが一緒になって取り組もうと設立したのが、『大工育成ネットワーク京都』なんですね。こちらの内容についても教えていただけますか。
工務店3社合同で新卒者の大工さんを一人前に育てる7 年間のプログラムです。各社が1名を採用し、同期同士で横の繋がりを持ってもらいながら育成をしていきます。また、給与や勤務時間などもできる限り明確にし、今からこの業界に入る人たちの不安を取り除けるように努めています。
3社合同の研修やミーティングを開催したり、面白い仕事があれば別会社の現場へ出向させたり、若手を交流させながらワイワイ楽しくやってもらいたいと考えています。1社でできることは限られているし、刺激も少ないと思うので。
現在は3 社ですが、「うちもやりたい!」と複数の企業が声をあげてくれています。今後この取り組みに参加する工務店は増えて行くと思いますし、ゆくゆくは京都以外にも広まっていってほしいですね。
2024 年度からのスタートに向けて、高校を中心に学校訪問をされているそうですが、感触はいかがでしょうか。
現在は新卒者への求人が溢れかえっているような状況ですので、やや苦戦はしていますね。
そんな中でも「作業している大工さんを見たことある!」「ああいうのかっこいいやん!」って思ってくれている学生さんはいるんですよ。私のところには現在までに2名、3社合わせると計5名の学生さんが興味を持って見学に来てくれています。
:5 名、すごいじゃないですか! ただ“大工になる”ということではなく、家を建てる志のようなものをわかってもらえるとよいですよね。地球温暖化が進んでいる今、家の価値というのは改めて見つめ直されていますし、「家ってこんなに素晴らしい存在なんだ」ということが若い人にも伝われば…。
中学校や高校で、建築の仕事はどんなものかということに触れてもらえる機会があるとよいなと思います。就職するときになって急に大工という職業について考えるのも難しいですし、もっと早い段階で種まきからしていかないといけない。そういう話は学校の先生方ともよくしています。
私が小さいときは、竹ひごで工作したり模型を組み立てたりして、何かを完成させたときの達成感によってものづくりの楽しさを知ることができました。今の若い人たちにその楽しさを伝えるために何ができるのか…。例えば高校の文化祭の模擬店でやらせてみるとか、ものが出来て行く手順というものを 知ってもらいたいですね。
ものづくりの楽しさや達成感を味わえることは、大工仕事の醍醐味ですね。この仕事の魅力についてもう少しお伺いできますでしょうか。
私たちは、完成した家を見た施主さんから「わー!よくできてる!」「ありがとう!」という言葉をもらった瞬間に1 番報われるんですよ。家を引き渡すのは自分の子どもを嫁に出すようなものですから。
私たちが現場でワイワイ楽しく仕事している姿って、なかなか外からは見えないんですよね。大工同士で冗談を言い合いながら和気藹々とやっている、そんな雰囲気も含めて良い職業だと私は思います。元気だったらいつまででも続けられる素晴らしい仕事ですよ。小川さんはなぜこの仕事を?
やはりきっかけは、ものづくりが好きだったからですね。仕事をしていくうちに楽しさって忘れてしまいがちですけど、勉強しているうちに楽しさを再確認することもあります。
大工さんが楽しく夢のある職業だということを、今後もっとPR していきたいですね。
そのためには発信力を身につけていかなくてはと感じているところです。
その点、稲垣さんは発信力がありますよね。稲垣建材という会社を知ってもらうために自社のホームページにも力を入れて自ら発信をされている。今回もこのような『大工育成ネットワーク京都』を周知してもらえる場を設けてくださり、本当に感謝しています。
とんでもありません。これからの未来を担う大工の育成は、業界全体で取り組んで行くべき課題ですからね。弊社も工務店のみなさまのお力になれるよう今後とも励んでまいります。みなさま本日はありがとうございました。